定款自治の限界と株主間協定の限界

会社法になってから定款自治が広範に認められるようになったという印象がある。しかし、印象だけである。実際のところは、①会社法が定款自治を認めている場合に(つまり定款で異なる定めをすることを認めている場合)に、②その限度で、のみ認められるだけであるから要注意。ネットで検索すると以下の情報に遭遇した。

会社法の立法担当官は、会社法の規定は細心の注意を払って作られており、会社法に定めがある 事項につき定款で別段の定めができるケースはすべて明文で規定されており、明文の定めがない限 り定款により法律の定めを変更することは認められない4と主張している。

(引用元:https://core.ac.uk/download/pdf/70372537.pdf~定款規定の弾力的解釈の可否をめぐる問題 京都地方裁判所平成20年9月24日判決 判時2020号 155頁 Issue of the interpretation of the provisions of the Articles of Incorporation elasticity −Kyoto District Court, 24 September 2008− 清 水 正 博

 

具体的には、合弁会社で利害対立のある複数当事者が株主として併存し、その間で株主間合意書を取り交わす場合を想像してみる。ここで少数株主の株主総会決議事項に関する拒否権を規定してみる。会社法が要件を加重できるとしているものを加重して、全会一致が必要と定めたとしても基本的に問題はない(デッドロックをどう解消するかという別の問題が出てくるが)。しかし、これを緩やかにして、たとえば3分の2以上の賛成が必要なところを過半数でよいと定めてみる。これは認められない。「認められない」という意味は、法律上必要な決議があったとは認められないということであるから、決議は無効、これを前提とする行為も原則として無効ということになる。